国内No.1の社員研修・企業研修サイト[社員研修プロ]
【キャリアアップ助成金/正社員化コース】の申請手続きの流れを全て徹底解説しました。助成金をうまく活用して、社員教育を加速しましょう。
皆さんの会社に「非正規雇用労働者」(有期契約社員、パート、アルバイト等)はいませんか?
その中で「ずっと自社で働いてほしい」と思っている従業員はいませんか?
しかし、正社員にするには社会保険等の負担もかかるし、教育するには費用もかかる。
費用の面で悩んでいる方には、厚生労働省の制度「キャリアアップ助成金/正社員化コース」を利用しましょう。
厚生労働省は「非正規雇用労働者」のキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取り組みを実施した事業主を対象として、「キャリアアップ助成金」を支給する制度を用意しています。
条件を満たしている会社であれば、一人あたり最高72万円(生産性の向上が認められる場合)の支援をうけることができます。
目次
先に書きましたように、「キャリアアップ助成金」とは厚生労働省が「非正規雇用労働者」を「正規社員等」にキャリアアップするために、事業主に助成する制度です。
詳細にうつる前に、以下の事項を確認してください。
※ 原則、雇用保険被保険者数が0人の場合や、事業所が廃止されている場合等を指します
ここに該当する項目が1つでもあれば、「キャリアアップ助成金」だけではなく、すべての助成金を受け取る事ができません。
「キャリアアップ助成金」には「正社員化コース」と「処遇改善関係コース」がありますが、今回は「正社員化コース」について紹介していきます。
なお、ここで記載する内容は以下の条件に合致する中小企業の事業主向けです。
資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数(※) | ||
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | または | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | |
卸売 | 1億円以下 | 100人以下 | |
その他の業種100人以下 | 1億円以下 | 100人以下 |
※常時雇用する労働者の数とは、二ヶ月を超えて使用される者(実態として二ヶ月を超えて使用されている者のほか、それ以外の者であっても雇用期間の定めのない者および二ヶ月を超える雇用期間の定めのあるものを含む。)であり、かつ、週当たりの所定労働時間が当該事業主に雇用される通常の労働者と概ね同等である者をいいます。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigy ounushi/career.html
対象となる従業員は以下の4つのいずれかに該当する従業員です。
なお、転換する従業員に関しては、以下の細かい条件があります。
対象となる事業主にも条件が指定されています。
2-1.の派遣労働者を対象従業員とする場合は条件が少し変わってきます。
今回は派遣労働者を除いたケース、つまり
の3パターンに該当する条件を紹介します。
他にも、特別加算を受ける場合の条件があります。
転換する社員が以下の条件に該当する場合は、よく確認してください。
また、転換日より前に若者雇用促進法第15条の認定を受けていること。または、支給申請日においても引き続き若者雇用促進法に基づく認定事業主であること。
また、勤務地限定正社員又は職務限定正社員に転換すること。
生産性要件とは、生産性が「3年度前に比べて6%以上伸びていること」が条件となります。
他にも、「3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること」という条件もありますが、この場合は、「金融機関から一定の「事業性評価」を得ている」(与信取引等のある金融機関に照会される)という事が必須となります。
それでは、実際の助成金はいくらもらえるのでしょう。
中小企業事業主の場合の金額を一覧表にして説明します。
転換前 | 転換後 | 1人当たりの助成額
(生産性要件あり) |
特別加算(*) |
有期契約労働者 | 正規契約労働者 | 57万円(72万円) | +9万5千円
(12万円) |
無期契約労働者 | 28万5千円(36万円) | ||
無期契約労働者 | 正規契約労働者 | 28万5千円(36万円) |
*母子家庭の母等又は父子家庭の父、若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の者を転換
勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、有期契約労働者等を当該雇用区分に転換又は直接雇用した場合
引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
※「営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課」で計算します。
この計算式で計算した結果が、以下のようになれば「生産性要件あり」となります。
直近決算済年度の3年度前の計算結果+6% < 直近決算済年度の計算結果
例えば、直近決算済年度が29年度である場合は、以下のようになります。
26年度の計算結果+6% < 29年度の計算結果
計算シートは「http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html」からダウンロードできますので、ぜひ計算してみてください。
では実際の手続きについて説明していきます。
① キャリアアップ計画書を作成し、管轄労働局に提出します。
「キャリアアップ計画書」に、3年以上5年以内の「キャリアアップ計画期間」を定めます。
「キャリアアップ計画期間」内であれば、20人/年度まで申請ができます。
なお、「キャリアアップ計画書」は申請が受理されるまでに時間がかかる可能性があるため、「キャリアアップ計画期間」の1~2か月前までに提出しましょう。
② 就業規則等を作成または修正し、労働基準監督署に提出します。
従業員を転換した後、修正した場合は無効となりますので、必ず転換前に作成、修正してください。
③ 従業員を就業規則に従って、転換します。
転換後の給与(基本給)は、転換前と5%以上、値上げされていることが必要です。
④ 転換後、6か月目の賃金支払い日の翌日から2か月以内に、「支給申請書」と添付書類を労働局に提出します。
添付書類の代表的なものを紹介します。
・就業規則(施行日が転換前のもの)
・転換前と転換後の雇用契約書(労働条件通知書)
・転換前6か月~転換後6か月の賃金台帳
・転換前6か月~転換後6か月の出勤簿またはタイムカード
・生産性要件ありの場合は、生産性要件算定シートと算定根拠となる書類
ここまでが手順になります。
この後、4~6か月後に助成金が支給される(振り込まれる)事になります。
「キャリアアップ助成金」を受けるには、最初に「キャリアアップ計画書」を作成しなければいけません。
この申請が労働局に認められなければ、先には進めません。
計画書の作成に不安がある場合は、労働局(ハローワーク)にて相談することもできます。
就業規則の作成や変更の元にもなる資料ですので、しっかりと考えて書きましょう。
「キャリアアップ計画書」はここからダウンロードできます。「https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801.html」
「キャリアアップ計画書」には、「キャリアアップ管理者」を定めなければいけません。
「キャリアアップ管理者」は、有期契約労働者、無期契約労働者のキャリアアップに取り組む人という定義です。
総務部長や人事部長など、業務や待遇を管理している立場の人が良いでしょうが、適任者がいない場合は、事業主でも構いません。
キャリアアップ管理者 | 使用者代表 | 労働者代表 | |
キャリアアップ管理者 | ○ | × | |
使用者代表 | ○ | × | |
労働者代表 | × | × | |
対象労働者 | ○ | × | ○ |
「キャリアアップ計画書」のサンプルを掲載します。
1,2ページ目は、事業所の情報等を記載するページですので、3ページ目のサンプルを掲載します。
ここでは、「キャリアアップ管理者」は事業主とします。
「キャリアアップ計画書」が無事受理されたら、次は就業規則の作成(変更)です。
就業規則は常時10人以上の従業員を使用する場合に作成する義務がありますが、助成金を申請する場合は、10人に満たなくても作成する必要があると思った方が良いでしょう。
作成したら、労働基準監督署に提出することを忘れないでください。
就業規則の内容に不安がある場合は、労働局やハローワークに相談することもできます。
もし、最初から作るのが大変な場合は、厚生労働省が発行している「モデル就業規則」を使うと良いでしょう。
モデル就業規則はこちらからダウンロードできます。
就業規則において、注意しなければならない点をいくつか記載しておきます。
要件1)労働基準法に違反していないこと。
これは当然ですね。法律をきちんと守らない会社には、助成金は支給されません。
残業についても36協定の協定書はありますか?なければきちんと作成し、労働者の代表者 にサインと押印をもらっておきましょう。
要件2)賃金規定(給与規定)も作ること。
助成金の申請審査をする場合、賃金の正当性を疑われる場合があります。
例えば職種等で賃金形態が違う場合に、その正当性を説明する資料が必要になります。
賃金規定がきちんと整備されていれば、その必要はありません。
その際、各手当の定義や、残業代、休日出勤手当等の計算方法も定義しておきましょう。
要件3)転換制度の定義には、以下の事が明示されていること。
・面接や試験を要する場合はその詳細
・勤続年数、評価等の要件があればその要件
・転換、採用時期を明示していること
これらの事項は「キャリアアップ計画書」にも記載していますので、矛盾していないことが大切です。
「キャリアアップ助成金」のパンフレットにも、就業規則の例が掲載されていますので、参考にしてください。
「https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000342398.pdf」
就業規則の作成(変更)が終了したら、実際に転換し、転換後6か月目の賃金支払い日の翌日から2か月以内に申請を行います。
申請したら、いろんな観点から審査されますが、特に重要視される点をご紹介します。
審査は労働法令違反がないか、という点が重要視されます。
労働法令違反がないかどうかは、労務管理をきちんとしていれば見逃さない事項です。
労務管理というと範囲が広くなりますが、以下の項目に特に注意しましょう。
1)労働条件
「労働条件契約書」を従業員に交付していますか?
助成金の申請には、転換前と転換後の両方の「労働条件契約書」を添付書類として求められます。
特に転換後の「労働条件通知書」は、転換後の待遇としてふさわしいかどうかをチェックされます。
賃金も5%アップされている事が条件になっていますので、注意しましょう。
もし、転換前の「労働条件通知書」を交付していない場合は、すぐに作成し、交付しましょう。
日付は遡ってもかまいません。
労働条件に明示する事項は以下のとおりです。
①労働契約の期間
②就業の場所・従事する業務の内容
③始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
④賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項
⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)
厚生労働省でも労働条件通知書の例を提供していますので、利用しましょう。
「https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/」
2)社会保険、雇用保険
転換前、後を問わず、労働時間の時間数に応じて、社会保険、雇用保険の加入が必要です。
転換後は正規、無期雇用になりますので、当然社会保険、雇用保険の加入は必須です。
忘れがちなのが転換前ですが、労働時間が20時間/週を超えているのであれば雇用保険に加入していなければなりません。
所定労働時間が40時間/週の場合、30時間/週を超えているのであれば、社会保険に加入させていなければなりません。
従業員の労働時間を再度チェックしてみましょう。
3)勤怠管理
申請時には、出勤簿またはタイムカードと賃金台帳を添付資料として提出しなければなりません。
勤務状況に合わせて、きちんと賃金が支払われているか、確認されることになります。
また、残業をしている場合は、相応の残業代が支払われていなければなりません。
当然、36協定で結ばれている時間以上に残業をさせていてはいけません。
日頃から、従業員の勤務状況を把握し、正当な賃金が支払われているか確認を怠らないようにしましょう。
「キャリアアップ助成金」の「正社員コース」の場合、転換後の固定賃金が5%以上アップさせることが条件になっています。
「固定賃金が5%アップする」とはどういうことでしょうか。
まず、「固定賃金」ですから残業代や交通費等、変動する手当は計算に入れられません。
また、以下の手当は計算に入れられない事となっています。
・実費補填であるもの
・就業場所までの交通費を補填する目的の「通勤手当」
・家賃等を補填する目的の「住宅手当」
・就業場所が寒冷地であることから暖房費を補填する目的の「燃料手当」
・業務に必要な工具等を購入する目的の「工具手当」
・繁閑等により支給額が変動しうる「休日手当」及び「時間外労働手当」
・毎月定額で支払われる「固定残業代」
・本人の営業成績等に応じて支払われる「歩合給」
・本人の勤務状況等に応じて支払われる「精皆勤手当」 等
つまり、労働したことの対価として支払われる賃金で、毎月変動しない手当が対象となります。
一番確実なのは「基本給」ですね。
「役職手当」や社員一律に支払われる「住宅手当」も対象となる場合があります。
対象となるか不明な場合は、労働局やハローワークに相談しましょう。
計算方法は以下のとおりです。
(転換後6か月賃金総額 - 転換前6か月賃金総額) / 転換前6か月賃金総額 ×100
例を挙げて見てみます。
転換前の基本給:18万円⇒転換前6か月賃金総額:18万円×6=108万円
転換後の基本給:19万円⇒転換後6か月賃金総額:19万円×6=114万円
(114万円-108万円)/108万円×100=5.55%
この場合、5%を超えているので条件をクリアしていることになります。
計算した結果、端数になってしまう場合がありますが、5%を超えていなければならないので4.95%のように、四捨五入して5%になる場合は認められません。
厚生労働省から「賃金上昇要件確認ツール」が提供されていますので、利用しましょう。
なお、賃金総額には「賞与」も入れられますが、就業規則に支給対象者及び支給時期が明記されており、6か月の間に支給された「賞与」が対象となります。
「キャリアアップ助成金」の「正社員化コース」は、計画⇒転換⇒申請の順に進めていけば、確実に受け取る事ができます。
特に計画の段階で、いつ、だれを、どのように転換するのか、賃金をいくらにするのか、を念入りに練っておけば、後は時期を間違えないように、注意すればよいだけです。
就業規則は不安があれば、労働局やハローワークに積極的に相談しましょう。
一度就業規則を作ってしまえば、後は定義された制度に従って、転換できます。
今回対象の1人だけでなく、今後入ってくる従業員の事も想定して、制度を作りましょう。
助成金は皆さんが納めている雇用保険料から支払われています。
ぜひこの制度を利用して、優秀な社員を獲得し、よりよい会社づくりを目指してください。
企業が高齢者を雇用したり、その処遇を改善することでもらえる助成金があります。 高年齢者・高齢者の雇用...
【キャリアアップ助成金/正社員化コース】の申請手続きの流れを全て徹底解説しました。助成金をうまく活用...
「社員に研修や訓練を受けさせると、国から助成金が受け取れるって本当?」 本当です! 社員研修や訓練な...